1/3 彼

3/3
50人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
ヘインが仕事帰りに見つけた彼は強く降る雨の中を傘もささずにフラフラとしながら歩いていた。 それを見ていると青年は人気のない路地に入り雨よけにもならない場所で立ちつくしているような背中が寒さで震えているのが見えたから 「こんなところを1人でいたら危ないよ?」とヘインが思わず声をかけたのは、青年の頭上に傘をさして雨から守ってあげたかったのだ。 そうして住む場所のない彼を息子たちと住む家へ連れ帰ったのは青年を放っておけなくて 妻に先立たれて息子を2人を育ててきたが仕事との両立は難しく家族の会話はしだいに少なくなり家と職場への往復する毎日に(つか)れていたのかもしれない。 青年との生活はとにかく刺激的であった。 彼の言動は急に変わることがあり僕と言っているときは料理や掃除などを手伝ってくれてる優しい性格をしていて感情に(とぼ)しいけれど「ヘインさん」と私を呼んで(なつ)いてくれているとも思う。 彼が女の子の服をきてソンウと仲良くなってくれたのは嬉しいのだが私に対して少し冷たくなるのはどうしてなのか…けれどこれはこれで娘が1人増えたような楽しさがあった。 私は暴力は好きではないのでね。 遠慮のない言葉遣いで私にいどんできた彼をしたら素直に(こぶし)を下ろしてくれたよ。 家族なのだから息子たちと同じように悪いことすれば(しか)らないとね。 父親らしいことができて少し感動した ソンウが「親父にいどむとかバカだろ」とかチソンが「(とう)さんを怒らしたらダメだ」とか言ってる声がきこえたけれど最近は息子たちを叱ったことさえ無かったはずなのに…息子たちに怖がられているのだろうかとヘインは心配になるのであった。 家に帰ってこないソンウは外泊が多かったけれど青年が来てから家にいることが増えて会話の少なかった家は(にぎ)やかになったし青年も感情に乏しい表情もやわらかさがでてきたのが嬉しい変化だ。 こうして私が連れ帰った人間の青年は少し変わっているが良い子であるのは間違いない。 了
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!