とあるモブ視点のお話

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とあるモブ視点のお話

ウチの名前は田中桜子。 とある中高一貫校に通っている高校一年生。自分で言うのはなんだけど、そこそこイケてるJKやってるっていう自信はある。唯一イケてないのは名前くらいかな。ほら、なんか古臭くない? そんなウチが今なんとなく気になっている存在がいる。 好きな人とか、そんなのじゃないよ!?そもそもその子女だし。 じゃあ仲良くなりたいのかって言うと、全然そんなんじゃない。むしろ逆なような気がする。 よくわからないって?ホラ、あれ。道端に変なゴミ落ちてたら気になるけどさ、そのゴミをさ、素敵!とは思わないじゃん?そんな感じ。 流石にこの例えは自分でも酷いと思うけどさ。 んで、その子っていうのが......「ではこの問題、北条さん解いてみてください。」.....うん、今丁度当てられた子ね。 名前は北条舞(ホウジョウ マイ)。 高校になってから転入してきた子なんだけどさ。いつも下ばっかり向いてるし、暗いし、それにいつも独り。 この子生きてて何が楽しいのかなって、ウチいっつも思ってる。 「どうしたの?北条さん。もしかしてわからない?」 「.........はい、わかりません..。」 「今日の授業当てるから予習してらっしゃいって、ワタクシ昨日言いましたよね?」 「.......すみません。」 あーあ、姑先生はこういうの厳しいの有名なのに。 姑先生っていうのはあの、眼鏡でお団子頭のいやーにカッチリとしたババアのことね。本名は花園優子っていうらしいんだけど、似合わなすぎでしょ。 北条もカワイソウ。この先生すっごくネチネチしていることでも有名だしさ。 「本当、こんなのがなんでこの学校に入学できたのかしら。いいこと?北条さん。高校は今までの中学でのものとは違うの。」 「....はい、すみません。」 「本当、そんな態度じゃ困ります。今はいいかもしれないけど、将来社会人になってからはこんな態度、本当に通用しないのよ?」 「......はい。」 「まぁこんな問題で躓いているようじゃ、就職どころか大学に行けるかどうかも怪しいものだわ。駄目よ、頑張らないと。」 「.......はい。」 「北条さん、アナタ次こそ、ちゃぁんとやってきてくださいね!次の授業でもワタクシ当てますからね?」 「.....はい。」 毎回怒られてるのに、なんでやってこないんだろ。 予習してもわからないのかな?って思ったけど、そうだとしたら本当に残念な頭だし、普通に予習してないんだと思う。 クスクス、クスクス。 クラスのみんなが、北条さんのことを笑っている。 北条さんが居心地悪そうに俯く。 本当、この人って生きてて何が楽しいんだろう。 昼食時間、ウチらが机をくっつけて賑やかにご飯食べてるときだって、北条は一人でお弁当食べてて、 放課後、ウチらがいつめんで集まってるときも北条は一人でまっすぐ家に帰っていく。 髪の毛だってボサボサ。お世辞にもスリムとは言えない体型で、ボソボソと話すせいか、何を言ってるかも聞き取りづらい。 学校に来ても笑われたり、怒られてたりしてるだけでちっとも楽しそうじゃない。 本当、北条って人生何が楽しくて生きてるんだろ。 ウチにはさっぱりわからない。 「じゃあ次の問題、田中さん答えて。」 「はい。答えは3です。」 「正解、素晴らしい!」 あらかじめノートに予習しておいた答えをすらすらと読み上げて、姑先生が上機嫌になったところで、ウチは授業に集中する為に、今考えていた『北条は何が楽しくて生きているのか』問題について考えることをやめた。
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