校則違反とアンラッキー

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「日野さん、明後日までに髪を元の色に戻してくれる?」 「これは地毛だ」 と言っても信じる奴はいないけど。私にはロシア人のじーちゃんがいて、クォーターってやつなのだ。疑うなら生え際を見せてやろうかと思っていたら、会長が身を乗り出して私の顔を覗きこんできた。私は思わずビクッと震えて身を引く。殴り合う以外で、男子とこんなに接近したのは初めてだった。 「な、んだよ」 「たしかに、色素が薄いね」 距離が近すぎて後退りたくなったが、舐められてはいけないと思い、負けじとガンつけた。会長は全然ビビらずに穏やかな声を出す。 「じゃ、パーカーを脱いで。それならできるよね?」 「おまえに指図される筋合いはねえよ」 私がそう言ったら、眼鏡の女が顔を引きつらせた。私は会長に背を向け、校舎に向かって歩き出した。 私のクラスは1-c。昇降口から中に入って、階段を登ってすぐの場所にある。 にぎやかな声が聞こえてくる教室に入ると、ざわめきがぴたりとやんだ。視線が集まってきたので見つめ返すと、彼らはそそくさと視線をそらした。わかりやすいな、ったく。私は肩にカバンを担ぎ、ずかずかと自分の席へ向かう。 「はよ」
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