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天之麻迦古弓。日本神話に出てきた弓の上手い神さまの名前がふっと浮かぶ。
ふと、少年が弓を降ろしてこちらを見た。
射抜くようなその視線に、私は息を飲んだ。慌てて踵を返し、石段を駆け下りる。
心臓がどくどくと鳴っていた。
あの子、誰だろう。
有名な選手? でも見たことがない。まさか本当に神の化身じゃないだろうけど。
その少年の姿は、家に帰ってからも目に焼き付いていた。
夕ご飯を食べながらぼんやりしている私に、妹の友理子が声をかけてくる。
「ねえお姉ちゃん、お姉ちゃんって弓道部だよね?」
「うん……」
「見学させてくんない?」
友理子はまだ中学生だ。高校の弓道部を見学してどうするのだろう? そう思っていたら、妹は「弓道漫画を描きたい」と言った。友理子は漫画研究部に入っていて、雑誌に漫画を投稿したりもしていた。私は箸を置いてつぶやく。
「ごめん、私、弓道辞めるから……」
「ええ!?」
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