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そう尋ねたら、凛がうなずいた。聞けば、あそこは親戚の家だという。
「弓道歴は長いの?」
「2、3回です」
――え?
「弓を引くの、年に1回くらいなんで。5月に御弓祭があるから馴らせっておじさんに言われて」
凛は気のない調子でそう答えた。うそでしょ……。私は思わず渡り廊下の途中で立ち止まった。先を行っていた凛がこちらを振り向く。なんだろう、この気持ち。もやもやして、ぐるぐるしてる。これは、嫉妬……? たった数回引いただけであんな弓が引けるなんて、そんなことあり得るんだろうか。私は震えそうになる声で尋ねた。
「指導者は、いないの?」
「引き方はおじに教えてもらいました」
「それだけ……? 部活に入ったり、大会に出たりは?」
「してません。神社に行けばいつでも弓を引けるのに、部なんて入って何の意味があるんですか」
それは、私の6年間を否定する言葉だった。私はぎゅっと拳を握りしめる。
「じゃあ、うちの部に関心ないのね」
「はい」
「冷やかしなら、案内しないわ」
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