赤い風船

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「ピーヒャラ ピーヒャラ」 スピーカーから大きな音が神社に響く 今日はお兄ちゃんとお姉ちゃんとだけで行く 初めての夏祭り お兄ちゃんはいつも意地悪ばっかり お姉ちゃんはいつも優しい いつもより人が多い参道を テクテク歩く お姉ちゃんと手をつないで テクテク歩く お兄ちゃんはお母さんにもらった200円を大事に 握っている 参道をしばらく歩いた 色とりどりの風船がある屋台があった 僕は見とれた 色とりどりの風船に まるで夢の中にでもいるようだった 僕がお姉ちゃんの引っ張る手に抵抗して ボォと眺めていた いつもは意地悪なお兄ちゃんが 「いるか?」 と聞いてきた 僕はブンブン首を縦に振った 気持ちが羽のように軽い 右手に赤い風船 左手にお姉ちゃんの手 家に帰る道をゆっくり歩く 風が頬をなでる 気持ちいいな そう思った時、右手を開いてしまった 「あっ」 赤い風船が人々の楽しい声をこえて キラキラ光る夜の空に消えていった…
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