7.

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病院のベッドの上に、青ざめた顔で横たわっている鷹衛を見た瞬間、息が止まるかと思った。 このひとの命がもしも喪われていたら――― 離れていても、その姿を見られなくても、声が聞けなくても、例え二度と会えないのだとしても。 鷹衛が生きて、あの真夏の太陽みたいなキラキラ眩しい笑顔で笑っていてくれれば、それでいいと思っていた。 だけど。 こうなったのは、久我のせいだ。 久我が鷹衛の周りをうろついたりしなければ、こんなことにはならなかった。 それなのに。 もしも、鷹衛が、自分の知らないところで、こんなふうに誰かに傷つけられたり、苦しんだり、ましてや命が喪われようとしてたりしたら。 そう考えたら、ゾッとした。 側にいなければ、守ることもできない。 久我のせいでこんなことになってるのに、矛盾しているのはわかっている。 それでも。 もう、何もできなかった高校生の頃とは違う、から。 それに。 鷹衛は、久我を庇ってくれた。 見た目の愛想のなさとは違って、面倒見のいいそのひとだから、ただ単に見過ごせなかっただけかもしれない。 でも、道路の反対側から、わざわざ駆けて来てくれたのだ。 心の底から憎んで嫌っているのなら、情の欠片も残していないなら、そんなこと、しなかったはずだ。 都合のいい思い込みかもしれない。 それでも、離れることができないのなら、その可能性に賭けてみたい。 鷹衛は、もしかしたら、まだ少しはこの愚かな男に、友情の僅かな欠片ぐらいは残していてくれるのかもしれない、と。 その想いが友情ではなく別のものだったら――なんて強欲な願いまでは抱かない。 欲しがるばかりの高校生の頃とは違う、今なら血を吐くほど欲しくても我慢できる。 側にいられない例えようもない苦痛と、身体の一部をもぎ取られたような喪失感に比べたら、欲を我慢することなんてなんでもないことに過ぎないから。 もちろん、あの春の日にぶつけた言葉がどれほど鷹衛を傷つけたかなんて、推し量ることすら赦されないぐらい酷いことをしたのはわかっている。 だから、謝罪を受け入れて貰えないことには、久我に選択肢はないのだ、ということも。 そのひとの目が覚めたら、心の底から謝って謝って謝り倒して。気の済むまで罵って貰って、なんなら殴って貰ってもいいし、赦して貰えるまで何でもしよう。 そう思っていたのに。 「しょーすけ」 掠れた微かな声で、そう呼ばれた。刃物男から庇ってくれたときも、そうだった。 まだ、変わらずに、名前で呼んでくれる。 そのことに、目の奥がツンと熱くなった。 「お前、あったかい、な」 血がたくさん流れ出てしまったから、寒いのかもしれない。思わず重ねた手を、指を絡めるようにして握り返されて、いろんな意味でザワザワドキドキしてしまう。 鷹衛はまだ、麻酔から醒めたばかりで意識が混濁しているだけなのかもしれない。それでも。 久我は、握った手を、もう離せそうになかった。
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