If ~冬依が長男編~

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先生は困り果てたように頬に手を当てる。 「今日は夏樹くんが早く帰ることになったでしょう。デートの順番が狂っちゃって」 「は? デート?」 思わず聞き返す秋哉に、先生は慌てて、 「いえいえ」 と手を振る。 「なんとなくデートって呼んでるだけで、ただ女の子と楽しくおしゃべりしているだけよ。 それなら、みんなで仲良くおしゃべりすればいいのでしょうが、なぜだか女の子たちは、夏樹くんとふたりになりたいようなの。それで仕方なく、表を組んで順番にしてるんだけど」 「……順番」 「ええ、夏樹くんと話せる順番」 呆れて言葉を繰り返す秋哉に、先生は言い訳するように、 「ああでも別に、夏樹くんと女の子をふたりきりにするわけじゃないわよ。同じお部屋に他のお友だちも職員もいるし」 当り前だ。 個室に行ったら、それはそれで大問題。 そんなの、もう児童館じゃない。 「お話する内容も、今日あったことだとかお家でのこととかで、特別なことではなくてね……」 不審げな視線を向ける秋哉に、先生が言い訳を重ねようとするが、 「夏樹は、女性と話すのが好きですから」 冬依が穏やかに口を挟んできた。
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