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結果的に鈴音を褒めたからか、春一の機嫌も直って、
「夏樹。最近の仕事はどうなんだ?」
夏樹の近状についての話題に変わった。
すると夏樹は嬉々として春一に顔を寄せていく。
「おう聞いてくれよ春。この間の客がさ――」
そうしてふたりは仲良さそうに、なにやら話し込んでいく。
「……」
こうなるといつも思うのだが、夏樹は結局、春一にかまってもらいたくて、鈴音に突っかかっているのではないだろうか。
春一と会話するきっかけに鈴音を使う。
そんなことをしなくても、春一だって普通に話しかければ、夏樹の話くらい聞いてくれるだろうに。
いや、ハタチも超えた男兄弟が仲良くおしゃべりする方が珍しいのか?
そういえば以前春一が、
「夏樹とは、最近あまり口を利かなくなったかな」
なんて少し寂しそうに言っていたが、こうして見ていると、全然まったくそんなことはない。
春一も楽しそうだ。
だったら自分を会話のきっかけに使われるのも、
『ま、いいかな』
なんて考えてしまう鈴音だった。
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