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それに比べると冬依はクールだ。
いつもたいてい、リビングのソファーで静かに本を読んでいて、春一が早く帰って来ても秋哉のようにはしゃいだりしない。
「見てくれハル。腹筋ローラーのスピードがあがったんだぜ」
そんなことを言いながら、秋哉はあのコロコロするやつをリビングに持ち込んで来たり、いきなり反復横跳びをおっ始めたりするのだが、
チラッと目をやるだけであまり関心がない風にそっぽを向いている。
秋哉に比べてあまりにも静かに座っているものだから、
「ねぇ、冬依くんは春さんの傍に行かなくていいの」
と鈴音が聞いてみるも、冬依はツンと形のいい顎をあげて、
「行かないよ。ボクは秋兄みたいに特に報告したいこともないし」
なんて素っ気ない。
「でもホラ、この間の小テストで満点とったって教えたら、きっと春さんも喜ぶんじゃないかな」
鈴音が重ねて勧めても、
「そんなの、わざわざ言うようなことじゃないよ」
冬依はつれない。
でもチロンと鈴音を見上げてきて、
「別に鈴ちゃんが言いたいんなら、言ってくれてかまわないよ」
などど思春期特有の回りくどいことをいうので、結局、鈴音が冬依に代わって春一に言いに行くことになる。
鈴音の報告を聞いて春一は、
「そうか」
とパッと顔をあげて笑い、
「よくやったな冬依」
冬依を振り返って声をかけるのだが、冬依は片手をあげる程度の反応で常に素っ気ない。
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