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ある日曜日の午後、鈴音は春一と一緒に買い物に出てきていた。
本当はトイレットペーパーを買いに出かけたかったのだが、春一が付き合ってくれるというので、電車に乗って、家の中に置くフットライトを選びに行くことになったのだ。
「夏樹はいつも帰りが遅いでしょう。センサーで反応するフットライトがあれば、いちいちスイッチを探さなくて済むかと思って」
夏樹は仕事の関係上、皆が寝静まった頃に帰ってくる。
トイレに起きた鈴音と、夜中にばったり鉢合わせした時には、飛び上がるほどびっくりした。
夏樹は真っ暗な中で水を飲んでいたのだ。
「電気ぐらい点けなよ」
慌ててスイッチをいれる鈴音だったが、夏樹は、
「めんどくせー」
取り合ってくれなかった。
でも、部屋に戻っていく夏樹の足元は、酔っているせいかとても危うく見えたし、真っ暗な中で夏樹と向き合うのはとにかく鈴音の心臓に悪い。
胸がドキドキしてしまう。
だから、春一からトイレットペーパーの買い出しを却下されて、
「鈴音は何か欲しいものはないの?」
と聞かれた時、鈴音の頭に真っ先に浮かんだのがフットライトだった。
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