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春一とふたり、電車に揺られてインテリアショップに買い物に行く。
来生家にとっては生活必需品だし、これはただのお買い物だと言い聞かせるのだけど、鈴音はまるでデートみたいだと、胸の内ではかなりわくわくしていた。
一方春一は、
「……そうか、夏樹のためのフットライトか」
買い物の理由がちょっと気に入らないみたいだけど、
でも電車の中では、ちゃんと立っていられない鈴音をドアとシートの間の隙間までエスコートしてくれて、人混みから庇ってくれた。
その腕の中に鈴音を囲い込んで守ってくれたのだ。
あまりのイケメンの大判振る舞いに、鈴音は思わず耳まで真っ赤になってしまう。
加えて春一はものすごくいい声で、
「俺以外のヤツに触るなよ」
なんてささやくものだから、
「キャー!」
ここが電車の中でなければ奇声をあげていたところだ。
「――音、鈴音」
何度か名前を呼ばれて、ハッと我に返った。
「えっ、もうついたの?」
「違う。ぼんやりしてどうした?」
心配そうに覗き込んでくる春一に、
「ううん、なんでもないです。大丈夫」
まさか見惚れてました、なんて正直なことは言えない。
首を振る鈴音に春一は小さく息をついて、
「まったく、家だとちっとも気が抜けないんだから、俺と出かけた時くらい、俺に集中しててよ」
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