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『もうすぐ、だね』
なにもない真っ白な空間。
その中心。
“誰か”の声がひっそりと落とされた。
『ふふ。良かった。あっちの俺が力を欲してくれて。思ったより早かったなぁ。やっぱり学園に編入したからかな?』
くすくす。
仄かに冷たい声色で、“誰か”はわらう。
『馬鹿だよねぇ。自分の力がこの世界にどんな影響を与えるか、まるで理解してない』
―――――まぁ、理解できないようにしてるんだけど。
暗い色を灯したエメラルドグリーンの瞳が怪しく光る。
『あーあ、あの女が俺の力を封印しなければ、こんなややこしいことにならなかったのに』
頭に浮かぶのは、赤ん坊だった自分に特殊な封印術を施した女。
この状況をつくりだした、元凶。
『でも、ざーんねん。そう簡単に思い通りになんかなってやんないよ』
悪戯が成功した子供のように口角を上げる。
しばし笑みを形作っていた口元だが、ふと表情を消した。
獰猛な獣を思わせる眼差しで宙を睨みつけ、自身の青い髪をぐしゃっと掻き乱す。
『――――とっとと消えろ、偽物』
どことも知れない不思議な空間に、濃密な殺意が充満した。
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