女子の闘争、男子の逃走

2/40
前へ
/132ページ
次へ
『もうすぐ、だね』 なにもない真っ白な空間。 その中心。 “誰か”の声がひっそりと落とされた。 『ふふ。良かった。あっちの俺が力を欲してくれて。思ったより早かったなぁ。やっぱり学園に編入したからかな?』 くすくす。 仄かに冷たい声色で、“誰か”はわらう。 『馬鹿だよねぇ。自分の力がこの世界にどんな影響を与えるか、まるで理解してない』 ―――――まぁ、理解できないようにしてるんだけど。 暗い色を灯したエメラルドグリーンの瞳が怪しく光る。 『あーあ、あの女が俺の力を封印しなければ、こんなややこしいことにならなかったのに』 頭に浮かぶのは、赤ん坊だった自分に特殊な封印術を施した女。 この状況をつくりだした、元凶。 『でも、ざーんねん。そう簡単に思い通りになんかなってやんないよ』 悪戯が成功した子供のように口角を上げる。 しばし笑みを形作っていた口元だが、ふと表情を消した。 獰猛な獣を思わせる眼差しで宙を睨みつけ、自身の青い髪をぐしゃっと掻き乱す。 『――――とっとと消えろ、偽物』 どことも知れない不思議な空間に、濃密な殺意が充満した。
/132ページ

最初のコメントを投稿しよう!

100人が本棚に入れています
本棚に追加