3人が本棚に入れています
本棚に追加
馬鹿なお願いをしたと少し後悔した矢先、電話口から返答がきた。
『見知らぬ人の所にはやっぱり……』
ダメか、と少し俯いた瞬間だった。
後ろから伸びてきた腕に、勢いよく携帯を奪われる。
びっくりして振り返ると、怒りの表情のシズクがそこにいた。
会話とサユリの表情で察したのか、怒鳴るように話し始める。
「嫌なの!!今は帰りたくない!!お母さんはいつだって私の言う事聞いてくれなかったじゃない!!それなら私だって言う事聞かないんだから!!」
言うだけ言って、強制的に通話を切った。
息切れしながら携帯を握りしめるシズクを見て、これが反抗期かと少し気圧される。
だがその顔は、涙ぐんで悲しげだった。
「ごめん……」
「いえ、サユリさんは悪くないです。やっぱり、ご迷惑おかけしそうなので帰ります」
「あぁ!待って待って!大丈夫だから!」
帰り支度を始めようとするシズクを止めるのに、この後数十分かかった。
だがいろいろ話してみてサユリは、相当溝が深そうだなと少しだけ覚悟した。
最初のコメントを投稿しよう!