加瀬シズク

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加瀬シズク

高校生までは、親の言う通りの人生を送ってきた。 エスカレーター式に学校も進学し、欲しい物も食べたい物も全て親の決めた物を選んできた。 自立出来ないんじゃないかという不安もあったのだが、母は決まって「自立なんかしなくても大丈夫」だと言ってくる。 シズクは、そんな親を見て更に不安に感じていた。 「この学校に行きたい」 初めて自分の意思で決めた事を、両親に打ち明ける。 猛烈に反対される事も、心のどこかでわかっていた。 だがそれがキッカケで、家出まで発展するとは自分自身も予想外だった。 「また雨降ってきちゃった……」 学校帰り、今日雨が降るとサユリに忠告した自分までも傘を忘れていた。 偶然帰り道に良い雨宿り場所だと入った場所は、数日前にサユリを含む見知らぬ3人の出会った場所。 少し広いスペースの休憩所だった。 ベンチも4つ置いてあり、普通に広々と快適に使える場所。 あの時と違うのはここにあの3人は居らず、自身の通う学校の子や公園で遊んでた子供達が集まっていた。 「雨降ってきちゃったなー残念」 「今日こそ砂のお城できると思ったのにさ」 「雨降るなんて今日言ってたっけ?」 座って聞いていると、そんな何気ない会話が耳に届く。 シズクにとっては何気ない会話も、今までやってこなかった日常なのだ。 そしてそれを思い出す度、脳内に両親の顔がよぎる。
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