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「俺、五月雨ヒロアキ。探偵やってるんだ」
「雨宮サユリ、会社員です」
「加瀬シズクです、えっと……」
今度はシズクの歯切れが悪くなる。
セーラー服で明らかに高校生なのはわかるのだが、何か言いたくない事情でもあるのだろうか。
話を変えようと、サユリが言葉を挟む。
「あの!アタシ隣町から間違ってここに来ちゃって……駅ってどっちですか?」
「あぁ、駅ならこの公園を右手に出て真っ直ぐ5分くらい歩いた所にありますよ」
「そ、そうですかー!ありがとうございますー!」
大袈裟に振る舞ってみるものの、普段やらないようなやり方に会話が弾むはずが無く再び沈黙が訪れる。
シズクがそこでようやく口を開く。
「家出したんです、私」
「えっ?」
「親と喧嘩しちゃって、今日は帰りたくないんです」
雨はまだ、降り止む気配がない。
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