序章

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序章

朝、森の冷たい大地に身を預けて、若草の上で朝日を受けてきらめく露を眺めたことがあるかい? 澄んだ水滴の表面には、ただ単に森の景色がさかさまに映っているだけだと君は思うかもしれない。 でも、よくよく覗き込んでごらん。 まるで違った世界が内側に広がっているのが分かるはずだ。 もっとも、露は日が高くなると蒸発してしまうし、その前に葉が重みに耐えきれず、露を地に落としてしまうこともある。 だからその中の世界は、僕たちから見ると一瞬で終わってしまうものであることには違いない。 しかし、露の中の住人たちにとっては、その一瞬は僕たちで言う何万年、下手したら何億年もの長い時間に感じられることもある。 しかもその間、それこそ天と地のひっくり返るような出来事が絶えず起こり続けている。 それに、僕たちのこの世界だって、どこかの世界の住人からすれば、一瞬にも満たない露の中の物語かもしれないのだ。 いや、きっとそうに違いない。 僕はこれまで、そんな露の中の世界をいくつか眺めてきた。 今回は、その中の一つを話そう。 これは、僕が見つけてから地に落ちるまで、最も時間が短かった露の話だけれど、それと同時に、いやそれ以上に、 最も美しいと感じた世界の物語だ。
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