Love your neighbor as you love yourself

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玄関のチャイムが鳴る 私は目元を揉んでからほっぺを軽く叩いて、扉を開けた 「佐和子…」 大宮くんは息が上がってるのか、荒めの呼吸だった もしかして、ここまで走ってきたのかな… 「久しぶり… どうぞ…」 私は客人用のスリッパを出した 「あ、どうも、お邪魔…します」 大宮くんはおずおずとスリッパをはいて、私に続いて部屋の奥に入ってくる リビングのソファに案内して、大宮くんはそこに腰かけた 「お茶…用意するから待ってて」 「あ、うん…ありがと…」 キッチンに立ち、IHコンロのボタンを押して、やかんでお湯を沸かす お湯が沸く時の、しゅーって音が静かな部屋に響いていた お互い無言の空間 「佐和子」 そんな沈黙を破ったのは大宮くんだった 「何」 私は後ろにいる大宮くんに振り返らずに答えた 「何があったの…?」 私はやかんを見つめながら言った 「…漫画の仕事、打ち切りになった」 「え」 「まあ、打ち切り…とハッキリ言われたわけじゃないけど… 私病気になっちゃって、漫画描くのが難しくなっちゃったんだよね そしたら静養しましょうかって言われて でも 病気が治る目途もないし、わかんないし…もう…漫画は…」 言いながらまた鼻の奥がツンとしてきた 「…ごめん」 私がそう言うと、後ろから大宮くんの手が伸びてきて、IHコンロを止めた 私が振り返ると、大宮くんは私の手を引いて、一緒にソファに腰かける 「病気って…?」 大宮くんは私の顔を覗き込むように、困ったような眉をさせながらも、口元は微笑みながら聞いてきた 「…医者にちゃんと見てもらって、命に別状はないけど 胃が常に痛くなる病気で… 治るかわからない変な病気なんだよね なんだか毎日胃が痛くて、漫画に集中出来ないんだ…」 「そうなんだ… 今は体調大丈夫? 辛くない?苦しくない?」 「大丈夫…」 私は小さく頷きながら言った 「そっか 俺さ、佐和子の漫画、毎月楽しみに見てたよ」 「え…」 そうだったの…? 「でも漫画が今月誌面に載ってなくて、どうしたんだろうと思って電話しちゃって… そう言う事情だったんだね…」 私は無言で頷いた 「ねえ、ところであの話、俺と佐和子の話でしょ? もう、漫画読んだ瞬間わかったよ 漫画家を目指す主人公と、画家兼、教師を目指す同級生のラブストーリー まんま俺らと一緒のキャラ設定じゃん」 「わかったか」 「当たり前じゃん それでこの漫画の主人公と相手役は、今後が今のところわからないけど…」 「…うん」 「続きは…? どうなるの…?」 続き… 続きは 「描けない…」 もう 描けない
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