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「春になったら…
桜、見に行きたいな…」
「桜…」
夏には
海に行ったり
田舎に行って
氷の入った、乳酸菌飲料飲んだり
親が作ってくれる、素麺とかを
家族でテーブルを囲んで食べたいなあ
そんな事してくれるような親じゃないけど
秋には
紅葉を見たり
時間を気にすることなく本を読んだり
ぼーっと映画を見たり
友達みんなとハロウィンパーティもしたい
冬には
年越しそば食べたり
初詣行ったり
ゆっくり温泉に浸かったり
雪まつりにも行きたいな
毎日毎日、朝から晩まで働き、帰宅してから漫画を描き
気付くと寝ていて、もう朝には仕事が待っている
唯一の休日の土日には、思いっきり一日中漫画を描きまくる
アルバイトで生活費を稼ぎながら、漫画を描く
そんな毎日の繰り返し
けど私はその生活を苦と思わなかった
だって、自分で選んだ道だから
普通に就職していれば良かった、などと言う後悔もやはりなかった
それは覚悟を決めていたから
と思って
やりたい事
したい事
総て投げ捨て
我慢して
風呂も4日に1回
食事はスーパーかコンビニで、カップ麺かおにぎりかパンだけ
仕事はすっぴん移動
通勤着は、実家から持ってきた、安い大量生産衣服メーカーの、くたくたに着古した服を毎日ローテーション
カツカツの生活を送って大変だね、と同情されても
私みたいな”貧乏生活”はしたくない、と言われても
周りが流行のファッションに身を固めたり
有名なスポットに出かけたり
話題のグルメを食べて楽しそうに過ごしていても
そんな娯楽にかまけている暇があるなら、漫画を描いて漫画家になる事の方が優先だった
人から自分の生活が貧乏だなんて言われても、貧乏だとは思わなかったし
漫画家になるなら当たり前だと思っていた
生活水準や環境など二の次三の次で、生活が破綻していても、自分自身におざなりなのも気付いていなくて
遊び呆けてる暇と時間があるなら
私は漫画を描くんだ
なんて、ずっと直走って来た
そう言う
人として当たり前の事
情緒的な事
投げ打って
漫画ばかり描いていた
それが私の幸せだと思ったから
それが、私の幸せだったから
でも、今思う
幸せとは、一体何なんだろうか、と…
「そうだね
春になったら一緒に見に行こうよ、桜」
「うん」
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