It is not in the stars to hold our destiny but in ourselves

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帰り道 菜園すずから貰った名刺を眺めた しっかりとした厚紙に 名前と電話番号と、メールアドレスが印字されただけの、シンプルな名刺 なんだか会社員とかが持っていそうな…そう言う名刺だった 黒いパーカーに、ジーンズと言うダル着のような恰好 そして、長くてさらさらとしてそうな髪 パッと見は凄く地味で 化粧も何もしていないその顔は、素朴な顔 菜園すずの第一印象はそんな感じ 「…ああ、mioさん…宜しくお願いします」 瞳を逡巡させながら、ぼそぼそと言った菜園すずの態度や仕草 声や会話も… 見た目通りの感じと言うか… なんだか拍子抜け 率直な感想を言えば、それ 大宮先生が、菜園すずの何処を好きになったのかよくわからないけど 何か、大宮先生にとって 菜園すずに惹かれる部分と言うのがあったのだろう 私にはない、何かが… 『そんなおっさんのどこがいいんだよ!』 『10歳も年下相手とかキメーだろ、ロリコンじゃん!』 でも… 恋するって、そう言う事なんだろうな… 「連載が決定しました」 ある時 担当から話があるとメッセージで言われ、都合のいい時間を聞かれてメッセージで送ると、その時間くらいに電話がかかって来て、そう言われた 『今は次の作品を描いていくために打ち合わせしていますし、アシスタントよりはまず次作を描く事が大切だと私は思いますけどねぇ…』 と言っていた作品 連載か… 久しぶりに訪れた予備校 職員室みたいなところに顔を出す 職員の中から大宮先生を見つけると、目で追いながら少し腹に力を入れた 「大宮先生〜…」 私の呼びかけに気付いた大宮先生は、一時停止すると、こちらに向かって来る 「大崎… 久しぶりじゃないか」 「大宮先生、話があります」 「話?」 7階の教室の非常階段 いつも開放されている扉 国道の反対側に位置するここは、西新宿の住宅街が目の前に広がる 「私、今漫画描いてるんですよ」 「漫画…」 「はい、漫画家です」 「漫画家?」 「そうです それで、予備校辞めようと思ってます」 二拍ほど間があり 「藝大諦めるのか?」 と、大宮先生は私を見ながら言った 「そのつもりはなかったんですけど… 作画の息抜きに賞に投稿したら入選して、漫画家デビューみたいなのして 作品がコンペ通って連載決まったので 漫画家の仕事してみようかな、と」 大宮先生は神妙な顔をしながら、しばし私の話を聞いていたけど 「そうか… でも他の子でも公務員試験受かって忙しくなった子もいるし、藝大行くだけが全てではない 新たな道を見つける人は沢山いるから、大崎も頑張れよ」 と言って、笑顔を見せた 「はい」 ビルや民家の明かりが灯る街並みを見渡しながら、お互いしばし無言だったが 徐に口を開く 「大宮先生覚えてますか? 「私を生徒じゃなくて、私自身として、見てもらいたいです」 って、私が言った事」 大宮先生を見たけど、大宮先生の横顔は口を結んで無言 少しの間があった後 「覚えてる」 と言って私を見た 「予備校辞めたら 私は先生の生徒じゃないね 漫画家で社会人になった私は 大宮先生と対等だよ」 そう言った私に、大宮先生は何も言わないので再び口を開く 「生徒じゃなく、私自身として見て下さい 私、今でも大宮さんの事好きです」 片思いの相手がいても 私は、先生が好き もう、逃げない 対等だから 先生の答えを聞かせて 伏せていた目が、じっと、私を見て 先生が口を開く 「大崎 俺の事、慕ってくれてありがとう 予備校で、大崎の成長を見るのが楽しかったし 俺自身も、大崎から学ぶ事や励まされる事が何度もあった 俺にとって大崎は 生徒の中でも、特別な存在だった でも 大崎の気持ちには応えられない ごめん」
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