It is not in the stars to hold our destiny but in ourselves

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『私を生徒じゃなくて、私自身として、見てもらいたいです』 『それは、今の立場じゃ無理だね 対等にならなきゃ』 『どうやったら対等になれますか…?』 『まー、俺と同じ社会人になれば、対等なんじゃない?』 予備校を辞める事を告げても 先生は対等に見てくれる事はないんだ あの日 星に願った願いは 叶う事はない これからも、ずっと 「今日は石膏像のブルータスを描きます ブルータスと言えば、カエサルが暗殺された際に放った ブルータス、お前もか と言うセリフが有名ですね ブルータスの石膏像は美大受験では定番の課題なので、しっかり描けるようになりましょう」 当時共和政であったローマは、内乱が続いていた そこでカエサルは共和政の政務官ポンペイウスを倒し、帝政ローマを築こうとした しかし終身政務官として権力をつけるカエサルに、共和政の保守派は彼を独裁者だとして、共和政を保とうと彼の暗殺を企てた その時に、仲間であり部下であるブルータスに、カエサルは裏切られて殺されるんだ なんて… 『…大宮先生は、好きな人いるんですか?』 『…片思いだけどね』 『そ、それは…私の知ってる人…?』 『知らない人だよ』 はなから、わかってた事じゃないか… 先生は、ブルータスではない 叶わないからこそ 私は星に願っていたんだ 大きな深呼吸を、一つした 「そうですか 大宮さんを好きになってよかったです」 私では、大宮先生の相手にはなれなかった 私は、大宮先生の好きな相手じゃない 「いつか好きな相手に想いを告げられたらいいですね」 「ありがとう…」 非常階段から教室に戻ろうとして、振り返る 「あ、大宮先生 私、大宮先生の片思いの相手、知ってるんですよ」 「えっ…」 「いつか、大宮先生も 大宮先生が好きな相手も… 同じ絵描き同士、負かしてみせるから 覚悟して下さいね じゃあ、大宮先生 お元気で」 大した荷物はなかったけど、ロッカーに置きっぱなしのカルトンバッグを肩にかけて 予備校を後にする 首都高が横に通る道 新宿駅に向かって歩いていく この道を、高校三年間と浪人生になってから…毎週毎週通ったものだ 遠くに広がる新宿の街の灯りを見ながら 絵具に水を数滴垂らして、絵具が滲んでいくような 色を段々重ねていった油絵のような 絵画のような世界が一瞬広がって 水滴の飛沫がアスファルトに落ちた
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