ホントにあったちょっと怖い話

髪を狙うヒトの話

　これは、私が学生時代の話だ。

　当時私は背中くらいまで髪が長かった。
　切るのが面倒だったので、量もそれなりにあった。
　直毛の剛毛だったから、メチャクチャしっかりした髪だった。
　だから、お金に困ったら髪を切って桂にしようとよく友人たちから狙われていた。

　（まちがいなく、羅生門の影響だ。）

　幽霊も同じ考えをしてるやつがいるらしく、私は何度かそういう気配を感じていた。

　夜道、通学路、墓場の先にある実家…………

　どこにいても、何故か髪が気になる。
　自分の毛根が無性に気になった。

　『みえる』友人曰く、

　「ハゲのおっさんがいっぱいつきまとってるよ」

　……セクハラ、犯罪です。

　やつらが実行してきたのは、私が県外の大学へ行った時と、就職で一度帰ってきた地元を、再就職を利用して完全に出ようとした時。

　大学進学の時は、急に気分転換したくなり、雑誌でテキトーに選んでボブカットにしてもらった。

　再就職の時は……
　前職の上司が急に「髪を切らないと仕事させない」と脅してきたからだ。

　その後すぐ仕事は辞めたが、再就職が決まる前にどうしてもカットしたくなり、結局ベリーショートくらいまで切ってしまった。

　髪だけですんでよかった。