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人が住んでいた話
これは、ウチの山の話だ。
ウチの裏山の方に、竹藪がある。
明治以前(記録で残ってるのはこの時代)からある、由緒正しき、自然の竹藪だ。
春はよく竹の子を堀にいったものだ。
けれど、ある日からパタリと山を登れなくなった。
あの日、父と姉と三人で竹の子を探しに来ていた。
1時間で大量収穫。といっても、私たちは大きめのを各自一本でよしとしている。だから三本だ。
あとは撤退あるのみ。
早足で山を降りている途中、いつもと違うルートを父が誘導した。
次来た時用に、帰りながら竹の子を見つける気らしい。
数分も歩かないうちに、石壁に囲まれた何かがみえた。
「昔の誰かの小屋だろう」
そう言われると、確かにぼろっちいがオクド(昔の台所)らしきものがある。
荒れようからして、大正、いやもっと前に使われなくなったんだろう。オクドの側面には草とも藻ともわからぬ植物が茂っていた。
私は植物学に疎かった。
父がけろっとしていたので、私も気にしないようにした。
姉だけは、あばばばば、と震えてた。
よく考えれば、明治からウチが一番奥の家だ。
姉の反応が正しかった。
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