塹壕の道の話

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塹壕の道の話

 これは、私の地元の話だ。  実家へと続く路は、かなり特殊な造りになっている。  両の端が深く掘られ、昔の橋のように異様に高くもりあがっている。さらに、車が一台通れるか通れないかの、ギリギリなほど狭かった。  片方は山から水を引くため掘られた用水路。が、もう片方は深いだけの溝。そこに人が立っても、路からは見えないほど深い。  古くからこの地区に住んでいる家系の、父も理由を知らないらしく。  「昔、城が近くにあったから塹壕の名残りかもなぁ」  そんなわけないか、と父は続けた。  「けど、ウチの柿畑は防空壕跡地に作ったから、有り得るかもな」  ははは、と笑う父をよそ目に私はガタガタ震えてた。  『みえる』友人が遊びに来たがらない理由が、やっとわかった。  
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