爪痕の話

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爪痕の話

 (これは、私の友人の話だ。)  その日、部屋に貼っているお札が剥がれ、しかたなく、一晩盛り塩でやり過ごすことにした。  深夜、話し声がして目が覚めたのだが。    「…………」  誰もいない。  再び横になって寝ようとした。  「……ロ…………ス……ォ…………」  また話し声。  シカトをきめこんで、無理矢理寝た。  翌朝、激痛で目が覚めた。  心臓の、少し上。刃物で引っ掻いたように、熱い。  けれどアザも傷もなにもない。  ズキズキする胸をおさえて学校にいった。  友人の一人(『みえる』子)が、  「そこ、どうした?」  といって授業中もずっとさすってた場所を指さした。  「朝、急に……」  怪我じゃないんだけど、と続ける前に、  「おっきいバンソーコー貰ってこようか?」  「…………え?」  私にはなにも見えない。
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