オレがお前を選んだ理由

2/2
30人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
オレがお前を選んだ理由―――――ねぇ…… 日曜日、いつの間にか眠ってしまったオレは、あいつの独り言に起こされた。 といっても、起きたのは頭だけだ。 あいつが何やら考え込んでるみたいだから、もう少し一人の時間をやった方がいいような気もして、オレは目を閉じたまま、あいつの様子を窺うことにした。 どうやら、あいつは、”オレを選んだ理由”についてあれこれ思い巡らせているようだ。 あいつがオレを選んだ理由には興味があるが、あいつは分かってるのだろうか。 ”オレがお前を選んだ理由”だってあるんだということを。 オレ達が出会ったとき、オレ達は二人きりじゃなかった。 周りには初めて会う奴らが大勢いて、オレは若干気疲れしていた。 視線を合わせるとそいつの相手しなくちゃならないし、いちいち構って気疲れが酷くなるのは避けたくて、オレはなるべく他人と顔を合わせないようにしてたんだ。 そんな中、なぜだか分からないけれど、ふと、お前と目が合った。 一番最初に記憶されたのは、あいつの黒い髪だ。 お前はオレのブラウンヘアーを気に入ってくれたようだが、オレは、あいつの黒い髪もなかなかいいと思う。 でも、オレがお前を選んだ理由は黒い髪じゃない。 お前を選んだ理由は………お前が、他の奴らとは違っていたからだ。 自分で言うのもどうかと思うが、オレの外見は周りの人間、特に女から気に入られるタイプらしく、ずっと、物心ついた頃から常に女の甲高い声が付き纏ってきた。 嫌われるよりは好かれる方がいいに決まってるが、こうも騒がれ続けていると、うんざりしてくるのだ。 でもお前は、オレに対してそういった態度は取らなかった。 離れたところからオレを見ていたよな。 それが、”オレがお前を選んだ理由”だ。 はじめて目が合ったとき、お前が他の奴らと違うってことはすぐ分かった。 だからオレは、お前を逃がさないように、行動に移した。 さりげなく近付いて、すぐ触れられる位置を陣取った。 お前には偶然に見えたかもしれないけど、あれは、オレが狙ってしたことだ。 お前のそばで、オレのことを印象付けるために、オレはいろいろ考えた。 どうしたらお前に選んでもらえるか、咄嗟にあれこれ考えた挙句、オレには妙案が浮かんだわけだ。 そしてそれを実行したとき、お前は、オレが思っていた以上の反応を見せてくれた。 思うツボだ。 …ただ、オレがしたことに対して、「運命みたい!」と喜ぶお前を見たときは、ちょっと単純過ぎやしないかと心配にもなったけどな。 まあいい。それをお前が”運命”と取るか”偶然”と取るかはお前に任せるさ。 どっちにしても、オレの計画が成功したことには変わりないんだからな。 オレは、お前にオレを選ばせたことを後悔なんかさせない。 これからずっと、死ぬまでずっと、オレはお前のそばにいる。 そしてお前を守ってやるよ。 そんなことを考えていると、ふわりと、お前の匂いに包まれた。 一緒に出かけるのも悪くないが、こんな風に静かな日曜もいいものだな。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!