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オレがお前を選んだ理由―――――ねぇ……
日曜日、いつの間にか眠ってしまったオレは、あいつの独り言に起こされた。
といっても、起きたのは頭だけだ。
あいつが何やら考え込んでるみたいだから、もう少し一人の時間をやった方がいいような気もして、オレは目を閉じたまま、あいつの様子を窺うことにした。
どうやら、あいつは、”オレを選んだ理由”についてあれこれ思い巡らせているようだ。
あいつがオレを選んだ理由には興味があるが、あいつは分かってるのだろうか。
”オレがお前を選んだ理由”だってあるんだということを。
オレ達が出会ったとき、オレ達は二人きりじゃなかった。
周りには初めて会う奴らが大勢いて、オレは若干気疲れしていた。
視線を合わせるとそいつの相手しなくちゃならないし、いちいち構って気疲れが酷くなるのは避けたくて、オレはなるべく他人と顔を合わせないようにしてたんだ。
そんな中、なぜだか分からないけれど、ふと、お前と目が合った。
一番最初に記憶されたのは、あいつの黒い髪だ。
お前はオレのブラウンヘアーを気に入ってくれたようだが、オレは、あいつの黒い髪もなかなかいいと思う。
でも、オレがお前を選んだ理由は黒い髪じゃない。
お前を選んだ理由は………お前が、他の奴らとは違っていたからだ。
自分で言うのもどうかと思うが、オレの外見は周りの人間、特に女から気に入られるタイプらしく、ずっと、物心ついた頃から常に女の甲高い声が付き纏ってきた。
嫌われるよりは好かれる方がいいに決まってるが、こうも騒がれ続けていると、うんざりしてくるのだ。
でもお前は、オレに対してそういった態度は取らなかった。
離れたところからオレを見ていたよな。
それが、”オレがお前を選んだ理由”だ。
はじめて目が合ったとき、お前が他の奴らと違うってことはすぐ分かった。
だからオレは、お前を逃がさないように、行動に移した。
さりげなく近付いて、すぐ触れられる位置を陣取った。
お前には偶然に見えたかもしれないけど、あれは、オレが狙ってしたことだ。
お前のそばで、オレのことを印象付けるために、オレはいろいろ考えた。
どうしたらお前に選んでもらえるか、咄嗟にあれこれ考えた挙句、オレには妙案が浮かんだわけだ。
そしてそれを実行したとき、お前は、オレが思っていた以上の反応を見せてくれた。
思うツボだ。
…ただ、オレがしたことに対して、「運命みたい!」と喜ぶお前を見たときは、ちょっと単純過ぎやしないかと心配にもなったけどな。
まあいい。それをお前が”運命”と取るか”偶然”と取るかはお前に任せるさ。
どっちにしても、オレの計画が成功したことには変わりないんだからな。
オレは、お前にオレを選ばせたことを後悔なんかさせない。
これからずっと、死ぬまでずっと、オレはお前のそばにいる。
そしてお前を守ってやるよ。
そんなことを考えていると、ふわりと、お前の匂いに包まれた。
一緒に出かけるのも悪くないが、こんな風に静かな日曜もいいものだな。
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