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あなたを選んだ理由――――
もし、あなたからそんなことを訊かれたら、私は何て答えようか。
日曜日、まどろむあなたの顔を眺めながらぼんやりと考えていた。
あなたの好きなところはたくさんあるのに、もしかしたら、その質問には即答できないかも。
でも、その答えは分からないけど、あなたと目と目が合ったときに感じたことは今もハッキリと覚えてる。
ああ、これはもう、私の好みとか意図とか、そういう全部をひっくり返してしまうほどの強い力が働いてるんだな…って。そう思ったの。
初めて会ったとき、周りには大勢の人がいて、私は他の人にも話しかけられたりしたけど、あなたのことが気になって仕方なかった。
あなたはスッと姿勢よく立っていて、その姿からはクールな雰囲気が滲んでいて、女の人にたくさん話しかけられていて、とにかく目立っていた。
出遅れた私がその輪に加わるのは難しそうだったから、私はこっそりと、あなたを観察してみたの。
真っ先に目に入った色素の薄いブラウンヘアーはとても綺麗で、羨ましかったな。
でも綺麗なのはそれだけじゃなく、立ち姿も、顔立ちも、特に目が魅力的だった。
表現が難しいけれど、とにかく、その目に私を映してもらえるのかと不安になったりしたほど、たまらなく惹かれてしまったの。
品がある容姿をしているけど、まだ完璧な大人になりきれていない”若さ”みたいなものも併せ持っていて、そこがまた女心をくすぶったのかもしれない。
でもその眼差しには意思の強さも宿していて、だから私は、ドクドクと心臓が騒がしく音をたててるのを知りつつ、あなたのその魅力的な目を見つめてしまった。
今思えば、そのときにはもう、私の気持ちはあなたに向かって流れ出してたのだと思う。
だってそのあと、思いがけずあなたとの距離が近くなったとき、あなたの表情、視線、声、その全てが私の心を激しく揺さぶってきたのだから。
そして、あなたがすること、その仕草すべてが、私には特別に思えたの。
まるで、その一つ一つが何かのシグナルのように感じられた。
だからわたしは、あなたから発せられたシグナルを、自分のいいように解釈しては、私達の出会いは運命だったのだと強く信じたの。
あなたにそのことを打ち明けたら、”運命”なんて大袈裟な言葉のせいか、あなたは呆れ顔になったわね。
でもしょうがないじゃない。
本当に運命だって感じたんだから。
だから目が合ったとき、私は、その運命に全面降伏するしかなかったわけです。
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