私があなたを選んだ理由

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その運命に引き寄せられてしまったあと、意外だったのは、あなたが思ってた以上にドライで口数が少なかったこと。 なんとなく若い印象があったせいか、私は、あなたの落ち着いた無口さに驚いた。 それは、一緒に住みはじめてからも変わってないわ。 「ちょっと、ちゃんと話聞いてる?聞いてたら返事くらいしてよね」 あまりにもドライなその態度に私が拗ねると、あなたは、仕方ないな、という感じでこちらを見てきて、でも目は笑ってた。 その目を見ると、私は初めて会った時を思い出してあなたへの想いがさら増した気がする。 でも同時に、ズルいとも思った。 だって、ポンと私の頭を優しく叩いて、それでチャラにしてしまうんだから。 何も言わないでも、そんな些細な仕草一つで、あなたは私の心を動かすの。 つまり結局は、あなたはおしゃべりだろうと無口だろうとそんなのどっちでもいいのね。 あなたという存在が、私にたくさんのものを与えてくれるのだから。 それからもう一つ意外だったのは、あなたが、想像以上に頼もしかったこと。 ドライな性格のせいか、物事に拘らないあなたとの同棲に、私は少しの不安もあったの。 私は心配性で、小さな事も気になってしまうタイプだったから。 真逆の性格に、あなたが疲れてしまうんじゃないかと考えたの。 なのに、いざ同じ屋根の下で住むとなると驚くほどあなたは私に寄り添ってくれた。 特に近所で空き巣被害があった時なんかは、ちょっとした物音で不安になる私を慰めて、様子を見てきてくれたり、夜中に目が覚めてしまった私が眠るまで起きててくれたり、とにかく優しく守ってくれた。 結婚するならこんな人がいいな……実はこっそり、そう思っていたの。 ………あれ?なんの話してたんだっけ? 「……ああ、あなたを選んだ理由、だったわね」 私は、自分の心の声に独り言で返事しながら、まだ気持ちよさそうに夢から醒めないあなたの柔らかいブラウンヘアーに触れた。 フ… と、あなたは吐息とともに瞼を揺らしたけれど、その綺麗な双眼を開くことはなかった。 あなたを起こさずにすんでホッとした私は、また、あなたを選んだ理由について考えを巡らせる。 そうね……やっぱり一言では表せられないわね。 だから、強いて言うなら、“運命”かな。 あの日、あなたと出会ったのも運命。 あなたと目が合ったのも運命。 あなたのささいな仕草を、私が特別なシグナルと受け取ったのも、運命。 そしてその運命に自然に導かれて、今の私達がいるのよ。 だから、私があなたを選んだ理由は、それが”運命”だったから。 ………なんて言ったら、やっぱりあなたは呆れる? 呆れた顔して、でもあなたのことだから、黙ったまま、きっとその呆れ顔の下ではこう思ってるんでしょうね。 そんなのただの偶然だ――――って。 別にいいの。 私の中では、偶然も運命も似たようなものだから。 あなたがただの偶然だと思うなら、それでいい。 だから、願わくは、このままずっと、幸せな偶然が続きますように…… そう祈りながら、私は、あなたのブラウンヘアーにそっとキスを落とした。
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