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目が覚めると、ベッドの上には私しかいなかった。
眠っていた自覚はなかったけれど、確かに意識が途切れるまではこのベッドでみんな一緒にいたはずなのに……
窓からは傾いた陽射しが時の経過を告げていた。
穏やかで、幸せな日曜が、終わっていく。
ほんの少し寂しさも通り過ぎたけれど、扉一枚向こうでは物音がしていて。
そして私は、一人でないということに例えようもない安心感を得られたのだ。
「起こしてくれたらよかったのに」
軽いクレームを携えて扉を開いたものの、目に入ってきた光景に足が止まった。
彼が、何やら身を捩ってテレビ裏を覗き込んでいたのだ。平常ではあり得ない体勢で。
「……何してるの?」
「別に」
いや、いくら無口とはいえ、その返事には無理があるだろう。
「何か落としたの?」
「いや、もう大丈夫」
そう言った彼は、体を振り向かせた。
何かを隠してるような気もするけど、そうじゃない気もする。
私は彼の顔色をじっと窺った。
このまま誤魔化されても構わないものか、思案しながら。
すると、彼がハァ……と長いため息を吐いたのだった。
「何かあったの?」
「いや…」
「何?」
「うん…」
無口だけど、彼がこんな風に言葉を濁したりするのは珍しい。
私は更に追及しようと決めた。
けれどその時、廊下をタッタッと走る足音が聞こえてきて、
そして―――
「フォル!」
彼の小さな叫びがリビングに響いたのだった。
ブラウンヘアーをなびかせて開いていた扉から駆け込んできたのは、私達の愛犬、フォルだった。
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