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前室を二つ抜け、詩紅は廊下で歩を止めた。
括達は形式的に頭を下げる。
失態を犯したとは思っていない。
「申し訳ありません」
詩紅は気に留めていないようだが、詩紅の報告で上層から叱責され、導護師の解任を言い渡される恐れがある。
先行きの不安でやや気が晴れない。
「心にもないことを言うな。それよりでかしたぞ。不満も知れたし、逆上のあまり魔の法律を使って掴みかかるという暴挙に出た」
歩いたわけではなかったのかとやや落胆したが、もうよい。
狼波に期待はしない。
詩紅はわずかに思案すると、上機嫌に言い放った。
「七日後に披露の儀だ。告知を出す」
括達はため息を吐く。
「無茶です」
どう考えても今の狼波に天使の務めを果たせるとは思えない。
こればかりは詩紅が断行しようとしても、本人も周囲も許さないだろう。
「会話も歩行もできる。態度は悪いがあれは物で釣ればよい。七日で仕上げるぞ」
括達の言葉は当然のように聞き流される。
詩紅は報告に向かうのだろう、括達を残して階下へと降りていった。
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