5 諦念

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 前室を二つ抜け、詩紅は廊下で歩を止めた。  括達は形式的に頭を下げる。  失態を犯したとは思っていない。 「申し訳ありません」  詩紅は気に留めていないようだが、詩紅の報告で上層から叱責され、導護師の解任を言い渡される恐れがある。  先行きの不安でやや気が晴れない。 「心にもないことを言うな。それよりでかしたぞ。不満も知れたし、逆上のあまり魔の法律を使って(つか)みかかるという暴挙に出た」  歩いたわけではなかったのかとやや落胆したが、もうよい。  狼波に期待はしない。  詩紅はわずかに思案すると、上機嫌に言い放った。 「七日後に披露の儀だ。告知を出す」  括達はため息を吐く。 「無茶です」  どう考えても今の狼波に天使の務めを果たせるとは思えない。  こればかりは詩紅が断行しようとしても、本人も周囲も許さないだろう。 「会話も歩行もできる。態度は悪いがあれは物で釣ればよい。七日で仕上げるぞ」  括達の言葉は当然のように聞き流される。  詩紅は報告に向かうのだろう、括達を残して階下へと降りていった。
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