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8 自尊
疲労されては夕拝に差し支える、括達は狼波に寄生を断ち切り休むよう願い出たが、狼波は聞いてはくれなかった。
自身を動作させるより楽だと、そして括達と二人でいたほうが楽だ、と言う。
どういうことかと深く考えることは、やはりしなかった。
覚醒してひと月、この世に馴染むために常に三人の導護師が同室し、万丈の間を出て祭壇に立てば皆が狼波に誓いを捧げる。
喧騒が好きではないようだが、括達以外誰一人として狼波に意識を向けない今が楽なのだろう。
市場の雑踏を抜け神殿の正面扉口が視界に入り、括達は一目でそこに異変を感じた。
扉の前に十名以上の僧兵、向かい合うその倍ほどの人の固まり。
心当たりが脳裏に浮かび、足を止める。
『入り口で揉め事が起きているようです。狼波は寄生をやめて、先に部屋に戻って下さい』
人出が多く感知が遅れたことは手落ちだったが、危険ななにかが起きているわけではない。
だがそこに狼波を近付けるわけにはいかない、平静に狼波へと告げた、が。
『どうやって⁈』
次いだ狼波の切羽詰まった反応に、括達は警戒心を強めた。
揉めているのは恐らく、礼誓教を快く思わない異教徒。
天使が覚醒する際に目に見えて礼誓教が強勢を誇るため、波乱が起こることは事前に訓示があった。
狼波の身体は万丈の間、予期せぬ事態があれば寄生を断ち切れば済む話。
しかしその手法を尋ねられることは予想外だった。
やはりここは詩紅が共に外出すべきだった。
だが今は自分一人、自身でできる最善の対処を取らねばならない。
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