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『ご自身を動かした後のように、魔の法律を断ち切って下さい』
仕方なく想像で対策案を提示する。
『できない! なんでだよ⁈』
狼波の焦りが増している。
急ぎ詩紅へ指示を仰ぐべきだろう、括達は足早に神殿へと向かう。
『そっちに行くな! ここから離れろ!』
扉前の騒動になにを感じ取ったのか。
狼波の意に反することで狼波に支障があるか、寸時に考え、決断する。
『大丈夫、正面は避けて裏口から入ります。それに狼波の身体は万丈の間ですよ。揉め事に巻き込まれたとして、対処するのは僧兵の私です』
天使の導護よりそちらのほうが本職だ。
狼波を安心させるように言い聞かせ、騒動を視界に入れぬよう外周から小走りで裏手に回る。
それで狼波は幾分か落ち着いたようだった、短い言葉が頭を掠める。
『ありがとう』
驚いた。
狼波が今、何故それを言う。
教えたからか、理解して言っているのか。
なにかを得たと思ったから、言葉を返したのか。
感謝の言葉など今はいらなかったが、説明する余裕はない。
これは血族の務め、自分にのみ与えられた任、喜んで対処する要件。
いつだったかそう神に、自分は誓いを捧げていた。
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