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真正直に意見を述べると、詩紅は険しかった表情を緩ませた。
息を一つ吐き、目を細める。
「感謝する。私も迷わず狼波を守ろう」
感謝するのはこちらのほうだ。
狼波に対して揺るぎない愛情を、自分に対しては信頼を確信できる有力な人物のその宣言は、心強い事この上ない。
難儀はしたが狼波は天使としての地位を確立している。
魔物の討伐も趣向を凝らして誘導すれば恐らく可能、詩紅の導護がなければ無理だとすら思える。
「徳のない天使の導護など誰にでも出来る任務ではないでしょう、私も一度投げ出しました。詩紅様は最も的確に導護していらっしゃる。以後とも宜しくお願い致します」
「いや、あれは括達の講釈のほうが効いておる。先代からの導護師も大層手こずっておるし、武勲を上げやすいのかも知れんな」
再び果実酒をあおる詩紅に、括達は告げた。
「異教徒の言葉、真偽の確かめようがない様子ですが、心に留めておきます」
事実無根の雑言だとしても、自分はその言葉に該当する行為を働いている。
導護師に温度差を感じる内は警戒すべきと、自身を省みて思う。
長らく一人、現状に妥協しない態度を取りながらも責務を全うし続ける詩紅。
酒の力を借りなければ曝け出す決心がつかなかったのであろう彼女の大きな煩いを、少しでも引き受けたかった。
「助かる」
重荷を預けた心苦しさからか、詩紅は神妙に頷いた。
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