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対話は平行線ではなかった。
撞信は軽い調子で溜め息を吐いた後、苦笑する。
「あー、そう言って貰えると助かるわ。俺も堅苦しいのは嫌いなんだよ、本当に」
狼波の出した条件は受け入れられ、撞信は明け透けに返答して見せた。
本来の撞信はこうなのだ。
括達も敬称で呼ばれる事にとてつもない違和感を覚えていた、この違和感を狼波は払拭したかったのだろう。
ただ、狼波が譲歩したというより、撞信が懐柔された印象。
括達は僅かに狼狽える。
撞信も同様の心境なのだろうか、困惑の面持ちで口を尖らせた。
「洞察力も知恵もあって、後は愛嬌さえあれば良い天使に成りそうなもんなのにな。何と勿体ない」
天使は本来、慈悲深く信徒を救う存在。
その固定観念から大きく外れてはいるが、狼波には何らかの力で人を動かす兆しが見える。
狼波は外部での私語を固く禁じられているなどして、内情を知る者に未だ天使として認められていない。
その反面、狼波の崇高な佇まいを多くの信徒が神聖視している。
本当に勿体ない。
徳のない天使の存在が許されるなら、撞信の言うように狼波は真意を見抜く良い天使に成れるように思える。
但しこの見解は当代導護師としての贔屓目、徳のない天使など現実許される訳がないだろう。
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