霖、止まず

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翌日・・・ 将吉の細君・晶子さんと大阪駅へ。 そこで晶子さんの母上と合流、 もっとも実の親子ではないらしい。 将吉が通っていた飯屋で 働いていたのが晶子さんで “おかあちゃん” と呼んでいるのは その店の女将だそうだ。 「ちょっと歩きますけど」 しゃんと着物を着こなした女将の あとへ続くと 雨上がりの路地裏へと入った。 「昨日までシトシトと長雨  やったんですけど  今日はお日さんが見えて  よかったわあ」 女将の言葉につられて見ると 秋空が高かった。 濡れた路面をしばらくいくと 正面に小さな寺・・・。 一礼してから門をくぐると 「おお、東京のお方ですなあ、  お待ちしておりました。  もっとも “待っておられた”  のは・・・あちらの方ですが」 住職が手で示す本堂の台に 純白の布に包まれた桐箱が こちらを向いているようだった。
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