霖、止まず

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「お世話になりました。  東京から参りました  尾上芳介と申します。  彼女・・・彼女の許嫁です」 彼女・・・桐の箱を見て 晶子さんと女将さんが ポロポロと涙を落とした。 「戦争さえ・・・戦争さえなかったら  こんな再会にならへんかったのに」 「ほんまやぁ、ほんまやなあ晶子。  こんな・・・遠い遠い大阪でぇ  独りで死なんで・・・  済んだのにぃ・・・」 「ほんに・・・ほんにや・・・」 住職まで項垂れて 箱の中の許嫁、響子をそっと見る。 響子はこの近くの遊郭で 終戦の頃、死んだという。    
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