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二世を誓ったのは
僕の出征前だった。
彼女はまだ女学生であったけれど
「石にかじりついてでも
生きて帰ってくる」
僕らは一度の契りを結んで
響子には僕の懐中時計を、
響子からは銀のブローチを、
互いの代わりにと
懐深くに抱いて別れた。
数度の手紙のあとは
戦況とともに連絡は絶えた・・・。
それは国内事情の深刻であると、
空襲だけの心配を、僕はしていた。
必ず生きてさえ帰れば
東京で再び響子と
笑い合う日がくるのだと
信じて帰ってきて聞いたのは・・・、
事業にしくじった響子の父が
高利貸しに騙されて
響子を売らねばならぬ羽目に
なったこと・・・、
その両親も東京大空襲以来
生死も判らぬということ。
訪ね探した響子の身内が
持っていた寺からの手紙を
将吉に託してやっと・・・
やっと・・・やっと・・・!。
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