暗がり列車

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(落ち着け、俺。大丈夫だ、大丈夫...)  両の目を開く頃には、彼はいつもの冷静さを取り戻していた。扉を開け個室を出ると、ズボンのポケットを探りスマホを取り出した。周囲を照らす光源を得るための行為だ。先ず自分のいる車両をぐるりと見渡すが、目立った異常は見られない。少し移動し車両の出入り口付近を照らすと、車両の明かりを付けるスイッチを発見した。 「明かりが付けば、大分気が紛れるが...」  久藤は電源のスイッチを操作したが、明かりが灯る事はなかった。微かな期待を寄せていた久藤は落胆の色を濃くする。 「チクショウ、やっぱりか。......ん?」  何気なく車両の出入り口を照らすと、窓の部分から光が外に漏れ、石造りの壁を映し出した。久藤はここはまだトンネルの中であると再認識する。外はその壁以外何も見当たらない。...いや、どうやら窓のところに「何か」が付いている。
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