暗がり列車

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 その瞬間、「バンッ!!」と窓を叩きつける大きな音が鳴り響いた。  そこには何もいない。何もいない筈なのに、その音は途切れること無く押し寄せ、窓を強く振動させる。  いつしかそれは「バンバンバンバンッ!!」という(おびただ)しい音の塊となる。実在しないものが、窓を叩き続ける。(しか)してそこには、ついにその存在を証明する「もの」が現れた。  それは手の跡だった。  人間のものと思わしき真紅(しんく)に染まった手の跡が窓に張り付き、(なお)その数を増やしていたのだ。
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