暗がり列車

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「うおおおおおおっ!!!??」  久藤は雄叫びにも似た叫び声をあげ、大きく後ずさった。そのまま反対側の出入り口に勢いよく衝突すると、その衝撃で手に持っていたスマホが宙に放り出される。飾り気のない裸のスマホは「ゴッ!」と鈍い音を立てて床に叩きつけられ、その機能を停止させた。  辺りは再び、闇と静寂に包まれた。窓を叩く無数の手は、いつの間にかその姿を消している。久藤は列車の出入り口を背にし、ゆっくりと床に崩れ落ちた。 「なぁ、何だ...今のは...。はぁ、はぁ...。ふざけんじゃ、ねぇぞ...」  同時に「バァン!」と金属を叩いたような音が車両内に響き渡る。久藤の拳には、痺れにも似た鈍い痛みが走っていた。
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