暗がり列車

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 久藤は4両目から離れ、前方にある2両目への連結通路へと向かった。先程と同様、2両目へと繋がる扉に身を隠して、中を光で照らす。  彼の右手は、無意識のうちに首にかけた十字架を握っていた。  久藤は心の中で、神に祈る。 (2両目にもがいたら...俺は発狂するかもしれないな。天にましますわれらの父よ、願わくは、御名(おんな)(たっと)まれんことを、御国の来たらんことを、御旨の天に行わるる(ごと)く地にも行われんことを。われらの日用の(かて)を、今日われらに与え(たま)え。われらが人に(ゆる)す如く、われらの罪を赦し給え。われらを試みに引き給わざれ、われらを悪より救い給え。アーメン)  久藤は戦々恐々としながら、2両目の中を覗いた。
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