暗がり列車

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 今回、彼はS県某所で秘密裏に信仰されている宗教について取材を行っていた。聞くところによると、その宗教の信者達はこの世界の創造主とされる「若意来斗天武(にゃいらとてんぶ)」という神を(あが)(たてまつ)り、日夜狂信的な儀式を行っているのだという。  如何にも胡散臭い話だと思っていたのだが、その地方に出向き話を聞いてみると、意外にも「若意来斗天武(にゃいらとてんぶ)」を知る人間は少なからず存在した。特に古くからその土地に住む人々は、その話題に明るい印象を受けた。  地域住民の協力もあり、取材最終日には宗教の総本山と言われる旧家に辿り着き、取材を行うことにも成功した。 (......そこまでは良かった。短期の取材でこれだけ成果があるのは珍しい。そう、ここまでは良かったんだよ)  茶色く変色したページを読み返しながら、久藤はその時の出来事を振り返る。
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