暗がり列車

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「..............................何で気がつかなかったんだ」  探索を再開して早々に、久藤はある決定的なものを発見した。彼はこの列車で起きた怪奇現象にさらされるあまり、至極当然の事を失念していた。  ガラス窓の先に広がる闇。その闇は決して無限ではなかった。  光だ。光がある。  寿命が尽き今にも消え入りそうなロウソクの光のように儚いそれは、久藤に大いなる希望を与えた。 「そうか...。ここはトンネルなんだ...。トンネルなんだよ!! 入口があって出口があるんだ!! 出口にさえたどり着けば、暗闇から抜けることさえ出来れば、きっとこの怪異を振り払える!! .........はっ。ははははっ。やったぞっ!! はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」  ついに姿を現した希望。先程までの様相が嘘のように晴れやかになり、歓喜に沸く久藤。その様子をじっと覗う白骨死体。彼は一体、何を思うのか。
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