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「っ!!?」
列車のガラス窓に張り付いていた久藤は、背後から唐突に聞こえた物音に驚き、直ちに振り返った。だがそこにあったのは、列車の操縦席に座ったまま朽ち果てた哀れな犠牲者の姿だけだった。
「今のは......あなたか?」
返事はない。彼は本当にただの屍のようだ。久藤は改めて彼の姿を正面から見据える。彼は手にボードのようなものを持っていた。
「これ...は? 何か書かれているな」
『メモをなくしてしまったため、ここに記録を記していこうと思う。私はこの列車を動かし、先の門へと進もうと思う。これ以上はもう無理だ。はやくここから出て楽になりたい。はやく......。はやく......』
「彼は......前に進んだのか。門とは一体何だ? あの光の事を言っているのか?」
外に見える光をよくよく見てみると、薄く揺らめくそれは、四角い枠に囲われているようだった。ボードを記した彼がそれを門と形容しても、可笑しくはない。
『外からあいつが「後ろに!」とか叫んでいた気がするがなんだったのだろう。いや、考えてる暇はない。私は前に進むんだ......。私は......』
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