暗がり列車

46/86
前へ
/86ページ
次へ
 ぱら...ぱら...。  静寂が支配する世界に、紙の擦れる音だけが響いていた。車掌の亡骸から拝借した鍵の使いどころを探していた久藤は、思いがけずこの列車のマニュアルと操作説明書を入手していた。スマホの灯りを頼りに、先ずはマニュアルに目を通していたのだが...。 「......ダメだ。紙が古すぎて腐っちまってる」  かなりの期間放置されていたマニュアルは、保管状態が悪かったのか紙が劣化し到底読めるものでは無くなっていた。それでもと往生際が悪くマニュアルにかじりついていた久藤は、とうとう解読を諦めマニュアルを雑に投げ捨てた。 「くそっ...無駄に時間食っちまった。操作説明書の方もダメか?」  諦め半分で操作説明書を開いた久藤であったが、幸いなことに操作説明書はマニュアルほど劣化していなく、十分に読むことが可能であった。 「...おお! ダメ元だったがこっちは読めそうだ!.......ふむ、ふむ」  時折頷いたり相槌を打ちながら、分厚い操作説明書を読み進める久藤。普段から活字に触れる事が多いだけあって、そのスピードは驚異的だ。ものの10分程度で操作説明書を読み終えると、パタンと両手で勢いよく閉じた。 「...後は実践あるのみ、だな」
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加