暗がり列車

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 この寝台列車の操作方法を頭に叩き込んだ久藤は、そのまま列車の最前に位置する機械に向き合った。その機械にはレバーや計器、スイッチ等がいたるところに配列されており、何らかの知識がなければ初見で動かすことはほぼ不可能であっただろう。  だが、今の久藤にはその知識がある。そして、この機械を動かすのにも、既に入手していた。  ちりん。  久藤はポケットからを取り出す。  麻の紐で結ばれた二本の鍵。この鍵こそが、列車を動かす機械を動作させるキーだった。その鍵の一本を鍵穴に根元まで差込み、右に180度回転させる。  ぐ......おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉん。  地鳴りのような低い音と共に、機械が動作を始めた。計器の針が一斉に立ち上がり、沈黙していたスイッチやボタンが失った光を取り戻してゆく。その様子を見た久藤は確信した。  「この列車は動かせる」と。
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