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「あらまぁ~。遠いところからわざわざ! どうぞどうぞ、上がって下さいな」
大昔にその宗教を開いたとされる沌家に訪問した彼は、そこで手厚い歓迎を受けた。
職業柄、邪険に扱われることが多かった久藤は面食らいつつも、この機を逃すまいと様々な質問を投げかけた。対応してくれたのは沌家で生まれ育ったという、一見どこにでもいそうな40代の主婦であったが、宗教の成り立ちや歴史、信仰する神について事細かに説明してくれた。更に「折角来ていただいたんだから、 うちにある御神体を見せて差し上げましょうか?」とまでいうではないか。
ここまでトントン拍子に話が進むことは実に稀な事だと、表情には出さず密かに笑う久藤。
だが、彼の幸運はそこまでだった。
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