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「本当にいいの…?」
うん。別にいいよ。雑用なら得意だし。
適当に言って結衣の手からモップを取る。「いつもごめんね…。」
いーよ。お父さんの体調早く良くなるといいな。
結衣はニコっと微笑んで「ほんといつもありがとうっ…!また明日ね…!」
そう言って図書室から出ていく。
ふわっと甘いシャンプーの香りが鼻をくすぐる。
結衣のお父さんは元から体が弱いらしくてよく入院するらしい。
結衣は1日1回のペースでお父さんのお見舞いに行っている。
さーて。掃除するかぁ!
わざとらしく叫んでモップで床をこする。
そういえば。
明日はクリスマス。付き合い初めてからちょうど1年だ。
そう思ってスマホを手に取る。
『結衣。明日ヒマ?』
と早々にメールを打つ。結衣からの返信はすぐに来た。
『う~ん…明日は…無理かも…ごめんっ!』
俺は、『いいよ。別に。w明後日は?』
とメールを打つ。
結衣からの返信が少し遅くなった。
『明後日は学校行けないんだ…ほんとごめんっ!』
俺は食い付くようにメールを打つ。
『なんで?wなんか用事でもあんの?w』
結衣からの返信が5分たっても10分たっても来ない。
ついに1時間ほどたって、やっと結衣から返信が来た。
『えっと病院に用事があって。』
俺は明らかにおかしいと思った。
『分かった。また明日な。』
そう打ってスマホの電源をきる。
そうだ。確かめに行ったらいいんじゃないか。
そう思って結衣にメールを打つ。
『今どこ?w俺は家でべんきょ~wだるw』
結衣にメールを送信する。
ものの10秒もたたずに返信が来た。
『今は病院っ!勉強頑張ってねっ!』
俺はスマホの電源を切って外にでる。
外では雨が降っていた。
あまりにも急いでて傘を持ってくるのを忘れてしまった。
俺の気持ちをゆさぶるように雨が体に打ち付ける。
結衣のお父さんが入院してる部屋は。…電気が消えている。まさか。俺は走って病院に入った…。
あの…結衣…いる?
息が荒くなって言葉があまり上手く言えない。
「えっと…伊藤結衣さんのお見舞いに来たのですか…?」
受付の人はかなり困っている。
……え?結衣のお見舞い…?結衣のお父さんは…
「え。伊藤結衣さんのお父様は先日退院しましたよ…?」
俺は。上手く状況を飲み込めなかった。
結衣。もしかして入院してたのって結衣のお父さんじゃなくて…
「え。。なんで…ここにいるの!?」
結衣…!なんでここに…!?お父さんは!?
結衣は一瞬驚いた顔をして、目に涙を浮かべて言った。
「ごめん…。実は…。嘘。付いてた…」
嘘ってなんだよ!?なんで嘘付いたんだ
よ!?
俺は結衣の肩をゆさぶる。「ずっと生まれた時からここに通院してて…今日…から状態が悪くなって…入院…する事になったの…。」
俺は力なく言った。
なんで…嘘…付いたんだよ…。
結衣がいきなり俺の肩をつかむ。
そして泣きながら俺に微笑む。
「死ぬんだよ。私。来年の春に。死ぬの。」なんで。なんで。なんで。
気持ちをおさえて力なく俺は微笑む。
ごめん。いきなり来ちゃって。
そう言って病院から逃げるように出た…。
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