今日は雨、明日はきっと。

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 クラスメートの頭の上。一人一人が違った天気を乗せている。  ある日突然、私にはそれが見えるようになってしまった。理由はまったく不明。最初に目の当たりにした時は、それこそパニックで倒れそうになったほどだ。あまりのことに言葉を失い、何度も夢かと思って目をこする。それでも消えない。私は自分の頭がおかしくなってしまったのかと思った。 「一華ちゃん、大丈夫? まだ貧血?」 「え? あ、ううん、何でもない。転校生、どんな子だろうね」 「そうだね。かっこいいといいね!」  男子が来るのだとすれば、当然そんな期待が沸き起こる。だから、女子の頭の上には晴れが多いのか。逆に、男子の頭の上は荒れた天気となっている。  私は最初、この現象に自分の頭がおかしくなったのかと思いながらも、何とか冷静に向き合い、分析しようと頑張った。そして、自分なりの答えを見つけたのだ。  皆の頭の上の天気、それはすなわち──皆の心の中。気持ちを表す空模様。  咲奈の頭の上は、いつもほんわかとしている。優しくておっとりしている咲奈にぴったりだ。いつでも小春日和のような咲奈といると、本当に落ち着く。というか、和む。  キーンコーンカーンコーン、予鈴が鳴った。 「皆、席につけよ!」  大きな声をあげるのは、真面目なクラス委員長。彼の頭の上は、今にも嵐がやってきそうな黒雲に覆われている。いつもピリピリとした委員長らしい。イラついていると、ゴロゴロと雷も鳴り出す。そういえば、委員長の青空はまだ見たことがない。 「転校生楽しみー!」 「イケメン、来い、来い!」  彼氏を絶賛募集中の子たちの上には、虹がかかっている。真夏のようなギラギラした太陽が照っている子もいる。彼女たちが思うようなイケメンが来なければ、途端に天気は崩れちゃうんだろうな。  実際、彼女たちの天気は変わりやすい。女心と秋の空、とはよく言ったものだ。  ちなみに、このへんてこりんな光景は学校内、それも、私のクラス内だけのことだ。そして、クラスメート相手にしか見えない。これも意味がわからない。でも、自分とまったく関係のない道行く人のものまで見えたら、鬱陶しくてかなわない。だから、これはこれでいいとしている。  意味のわからないことを考えても時間の無駄だ。散々時間を無駄にした後で、私はそれに気付いた。なので、今は細かいことは気にしないようにしている。そのうち見えなくなるだろう。うん、たぶん、きっと。
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