宵闇の白馬

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宵闇の白馬

 ピチチチ…ピチチチチ。  最初に耳にしたのは、聞き覚えのある鳥のさえずりだった。今までに何度も聞いた懐かしい音。そう思いながら身を起こすと、目の前には、見覚えない雑木林が広がっていた。  赤黒く化粧をした木々の切れ目からは、地平線が見えた。きっと雑木林の先にはどこまでも続く平原が広がっているのだろうけれど、その開放感に浸っている場合ではない。  僕はなぜ、こんな場所にいるのだろう。ズキンと頭に痛みが走り、それ以上のことが思い出せない。どこに住んでいたのだろう。誰と一緒に生活していたのだろう。友人は。いや、そもそも、僕の名前は…  無数の羽音と共に、ガァアガァアという鳴き声が響いた。カラスの群れが僕のことを見下ろしている。その光景にぎょっとした。夕焼けにカラスという取り合わせは、とても不気味に感じる。  それに、森には動物がいる。なぜ僕はそんな当たり前のことを考えなかったのだろう。ここにいては危ない。だけど、一体どこに行けばいいのだろう。  辺りを見回していると、突然、背後の草が揺れた。
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